主な対象疾患
脊椎・脊髄疾患
下肢神経痛で長距離歩けない,手足のしびれ,思うように動かない方は神経が圧迫されている可能性があります.検査をして神経圧迫が有れば神経の圧迫を取り除く手術をお勧めします.脊椎手術は手術用顕微鏡を使用して,明るく拡大した術野のもと安全な手術を行っています.
腰部脊柱管狭窄症,腰椎椎間板ヘルニア,頚椎症性脊髄症,骨粗鬆性椎体骨折等の手術治療を中心におこなっています.入院は平均2週間程度です.
顕微鏡を用いた手術
腰部脊柱管狭窄症(MRI)
頚椎症性脊髄症(MRI)
膝関節疾患
当院では小児から高齢者と幅広い年齢層の膝関節疾患の治療を行っています。
スポーツ傷害による膝関節疾患では、半月板損傷や前十字靱帯損傷が多くを占めており、必要に応じて関節鏡を用いた治療を行っております。
加齢性変化による疾患では、変形性膝関節症が多く、保存加療で効果の無い場合は手術加療(膝周囲骨切り術、人工膝関節置換術)を行っています。
肩関節疾患
肩関節痛は中高年にみられる代表的な症状ですが、五十肩というあいまいな病名で漫然と治療されているケースが少なくありません。当院では肩関節専門医による正確な診断と迅速な治療を心掛けており、非手術加療に抵抗する場合は低侵襲な関節鏡視下手術を積極的に取り入れております。適応があれば間葉系幹細胞や生体材料を用いた再生医療も行っております。末期の腱板断裂に適応のあるリバース型人工肩関節置換術も行っており、通常の人工肩関節置換術を含めて年間約40例程度行っております。また若年者のスポーツ障害、特に野球選手に関しては野球経験者による詳細かつ綿密な全身の診察により、悪いところを的確に判断して積極的にリハビリテーションを行うことにより、早期にスポーツ復帰できるよう手助けをしております。
腱板断裂
腱板断裂は70歳前後で肩関節痛をきたす疾患の代表であり、注射やリハビリなどの保存加療に抵抗する場合に手術が適応されます。修復可能な場合や65歳未満の若年者では鏡視下修復術が行っておりますが、当院では基礎的データから裏打ちされた最新の治療として、生体材料や自家腱に滑膜由来細胞を導入して補強する独自の手術を行っており、良好な手術成績を国内だけでなく海外にも報告しております。一方、65歳以上で広範囲に断裂しているため一次修復が困難なケースにはリバース型人工肩関節置換術の適応があります。
腱板広範囲断裂に対する鏡視下手術
右肩広範囲腱板断裂の鏡視写真(外側より)
人工素材と二頭筋腱で作成したパッチにより断裂部を補強
腱板広範囲断裂に対するリバース型人工肩関節置換術
術前レントゲン写真
術後レントゲン写真
右外傷性肩関節不安定症(反復性肩関節脱臼)
転倒して手をついたり、人と接触するなどして腕の外転外旋位を強制されると肩が外れる(脱臼)ことがあります。(外れかかったが自然に整復されたときは亜脱臼といいます)3週間外固定をするなどの初期治療をしっかりしなかった場合に肩が脱臼しやすくなることがあり、これを外傷性肩関節不安定症(反復性肩関節脱臼)といいます。原因としては肩関節の防波堤の役割をする前下方関節唇が剥がれてしまっているため、これを鏡視下に修復する手術が行われます。
鏡視下関節唇形成術の実際
剥がれた前方肩関節唇(右肩関節内を後方より鏡視)
アンカーを用いて剥がれた関節唇を修復
肩鎖関節脱臼
転倒や転落して肩を外側からぶつけたときに、鎖骨と肩甲骨を安定化させる烏口鎖骨靭帯が断裂してしまい、肩鎖関節脱臼が生じます。当院では独自に編み出した鏡視補助下靭帯再建術を行っており、良好な成績の報告を論文や著書で行っております。
術前レントゲン写真(鎖骨が上方に大きく跳ね上がっている)
術後レントゲン写真(ボタンと人工靭帯で断裂した靭帯を再建)
胸郭出口症候群
手の方に向かう重要な血管や神経が鎖骨と肋骨の間に走行していますが、挙上動作でこれらがはさまれてしまい、肩周囲の鈍痛、手のしびれや冷感、脱力などが生じる病態です。当院では、特に挙上動作で症状が増悪する場合には腋窩からアプローチする内視鏡下第1肋骨部分切除術を行っております。
内視鏡的第1肋骨切除術
腕神経叢を圧迫している肋骨を内視鏡を見ながら切除
除圧後の血管と神経
凍結肩(肩関節周囲炎、五十肩など)
中年以降に特に原因なく肩が痛くなって動きが悪くなる状態を従来より「五十肩」、あるいは「肩関節周囲炎」と診断されていましたが、2017年に日本肩関節学会がそのような病態を「凍結肩」と呼ぶことを定めました。外傷や手術など、明らかな原因がある場合には「拘縮肩」とよびます。当院では難治性の凍結肩に対して、入院ではなく外来でエコーを見ながら肩に麻酔をかけて動きをよくするサイレント・マニピュレーションという方法を行っております。しかし、喫煙者や糖尿病がある人など、難治性リスクがある人には入院して鏡視下授動術という内視鏡手術をお勧めしております。
サイレント・マニピュレーション
エコーを見ながら麻酔をかける
エコーで神経を描出
サイレント・マニピュレーションの実際
右凍結肩に対する鏡視下授動術
前方肩関節包を切離
後上方関節包を切離
下方関節包を切離
手外科疾患
手の外科で多いのは、腱鞘炎(ばね指、ケルバン腱鞘炎)、絞扼性神経障害(手根管症候群、肘部管症候群)、変形性関節症(ヘバーデン結節、母指CM関節症)です。多くは日帰りの手術加療を専門医により行っています。いずれも手をよく使う人や女性に多い疾患です。痛くて困っている方はご相談下さい。