形成外科とは主として体の表面の形の異常や色の異常を治療する科です。
具体的には唇裂・口蓋裂、耳介奇形、眼瞼下垂、手足の奇形といった先天性の形の異常や、ケガ・ヤケド・手術などによって生じた形の異常を、形だけでなく、機能的にも正常に戻すことを目的としています。
また、腫瘍切除後や外傷による組織欠損の修復・再建も重要な仕事の一つです。
色の異常としては生まれつきのアザ(赤アザ、青アザ、黒アザ、茶アザなど)やシミ、刺青などがありますが、形成外科では外科的治療や各種のレーザーを用いた治療を行っております。
広島市民病院に形成外科が開設されて36年になります。
平成23年は新患総数1408名、入院患者総数568名、手術件数は全身麻酔手術425件、局所麻酔手術652件で合計1077件。 その他レーザー治療などが310件にのぼり、全身麻酔レーザーも18件施行しました。(表1参照)
当科の特徴として、唇顎口蓋裂をはじめとする小児先天性疾患、乳房再建、眼の形成外科に力を入れており、いずれにおいても中四国ではトップクラスの手術件数をこなしております。
また、当院は新生児科、NICUや小児科が充実しており、また心臓血管外科や小児外科も有るため病院全体での小児手術件数が非常に多く、安心して小児の手術を受けていただける環境が整っていると思います。
当形成外科においても、小児手術には非常に力を入れており、6才未満の幼小児の全麻手術件数が年間約160件に及びます。

当科開設以来患者数は1300人を上回っており、平成23年の手術件数は103件。出生早期から口蓋裂の患者には口蓋床を作成し、哺乳を容易にさせるとともに、良好な顎発育を誘導します。言語指導も適時適指導を心がけています。顎裂への矯正治療は学童期におこないますので、土日に診療している開業医を中心に紹介しています。
日常診療は言語聴覚士や歯科口腔外科医師の方々と協力しておこなっていますが、患者の負担を軽くすべく、一度の診療で全科が順番にみていく体制づくりを進めています。また各科が連携を取りやすいように昨年に診療ハンドブックを作成して患者さんに配布しています。舌小体短縮症や、鼻咽腔閉鎖不全に対する手術もおこなっています。
術後の患者でも2m離れて唇裂とわかる傷跡や、20秒話せば口蓋裂とわかる症例では治療効果が期待できます。
当科における治療の概略は以下のとおりです。
■ 受診時:哺乳指導、歯科への口蓋床作成依頼
(口蓋裂のある場合、ただし全員ではありません)
■ 2〜3カ月:口唇形成術(体重5〜6キロ前後)
■ 1歳2カ月〜4カ月:口蓋形成術(体重8〜10キロ前後)
■ 入園前or入学前:必要であれば口唇修正
■ 顎裂のある場合年長頃より顎矯正開始し、3年生頃腸骨移植
■ 2歳頃より定期的な言語指導、発達指導
■ 両側唇裂の場合最近はすべて両側一度に手術しています。
■ 鼻の根本的な修正手術は15歳以上で
■ 広島口唇口蓋裂研究会というホームページを作成しました。口唇口蓋裂に関しての詳しいことはこちら
乳癌手術後の乳房欠損や変形に対して、修復を行う手術です。
乳腺外科との協力体制のもと、年間30件以上の乳房同時再建術を行っています。
平成23年は同時再建術が35件、そのほか二期再建や乳輪乳頭形成術などを含めた乳癌関連手術全体の合計では69件でした。
腹直筋や広背筋などの自己組織を用いた再建術と、シリコンインプラントを用いた再建術の両方を行っていますが、患者さんのご希望を尊重し十分な相談の上決定するよう心がけています。
インプラントは侵襲が少なく瘢痕も増えないという大きなメリットがある反面、保険適応でないこと、下垂した乳房が作成しにくいことなどのデメリットもあります。
インプラントによる再建術の際にかかる費用は、手術・入院費・インプラント代あわせておよそ60万円程度となります(実際にかかった実費で計算していますので、多少前後します)。
健側が大きく下垂した乳房の患者さんでは、自己組織では有る程度再現が可能ですがインプラントでは困難な事もあります。その時には健側乳房の挙上をお勧めすることもあります。
近年は人工物に対する抵抗感が減ってきたこともあり、低侵襲であるというメリットからシリコンインプラントを選択される患者さんが増えてきております。近年、当科ではシリコンインプラントが半数以上を占めています。
また、乳輪乳頭形成術の低侵襲化を目的に、刺青も導入しています。
乳房温存術後といえどもかなりの変形を来している症例もありますが、そのような症例に対しても修復は可能です。
乳癌術後の欠損や変形に悩む方はお気軽にご相談下さい。
乳癌術後の乳房再建術以外に、乳房縮小術・固定術(下垂した乳房を上にあげる手術です)や、陥没乳頭などにも対応しています。
乳房固定術は乳房再建術の際に併用して健側(乳癌ではない方の乳房)に対して行うこともあります。
陥没乳頭は若年者に対しては可能な限り乳管を温存する様に手術を行っています。
美容だけを目的とした重瞼術や除皺術、Buggy eyelid(いわゆる下まぶたのたるみ)などを除いて、基本的に保険適応で行っています。
- 眼瞼下垂 : 平成23年の手術件数は115件です。
まぶたを挙げる筋肉(挙筋)の働きが弱くなることから視野が狭くなり、おでこや眉毛に力が入ることから肩こりや頭痛の原因となることもあります。 多くの場合は筋肉を縮める手術(挙筋短縮術)で治療が可能ですが、全て挙筋短縮で治療可能なわけではありません。 皮膚の余剰量や挙筋の力の程度に応じて筋膜による吊り上げ術や眉毛下皮膚切除などを使い分けています。
治療によって視野が明るくなっただけでなく、見た目が若返った、肩こりが楽になったなどと喜ばれる方もおられます。 生まれついてまぶたの挙がりにくい先天性の眼瞼下垂は、通常の眼瞼下垂と異なり挙筋がほとんど働かないため挙筋短縮では解決しない症例が多いです。
先天性眼瞼下垂の手術はほとんどが小児ですが、このような場合は筋膜吊り上げ術を行っています。 手術時期は就学期前の5〜6才がほとんどですが、小児の先天性の強度な眼瞼下垂や瞼裂狭小症では弱視を防ぐために早期に手術をする場合もあります。
- 内反症 : 平成23年の手術件数は年間31例です。
いわゆる逆まつげで、角膜表面に睫毛によってキズが入り視力が下がるような場合もあります。
小児期の内反症で、目と目の間の広い(目頭のヒダが強い)症例では内反症手術と同時に内眼角形成(いわゆる目頭切開)を行い、整容的にも再発率でも良好な結果を得ています。
老人性内反症は通常再発しやすいですが、積極的に対応しており再発例はほとんどありません。
- 外反症 : 顔面神経麻痺や加齢性の外反症、外傷などによるものなど様々な症例に対応しています。必要に応じて筋膜移植、軟骨移植、植皮などを組み合わせます。
- 眼瞼部の悪性腫瘍 : → 悪性腫瘍の項目を参照してください。
- 義眼床 : 眼球欠損に対して、義眼床手術を年間10例程度行っております。義眼外来も行っております。
当科の特徴として義眼技師と形成外科医が同時に診察しコミュニケーションを密にすることによって、妥協を許さない完成度の高い義眼床を目指しています。
その他眼窩底骨折、涙道損傷や瘢痕拘縮、顔面神経麻痺の手術もおこなっております。

平成23年は悪性腫瘍関連の手術は年間23例でした。
皮膚悪性腫瘍は当科にて切除と再建を行います。そのほかの部位の癌については前述の乳腺外科以外に、耳鼻科・外科とも連携を保ち、再建に携わっています。
植皮・皮弁・遊離皮弁など様々な手技から適切な方法を選んで再建を行います。
耳鼻科頭頚部癌の再建には血管柄付き遊離組織移植術が主体としていますが、皮膚悪性腫瘍の場合には局所皮弁や植皮を適応することが多くなります。
- 皮膚悪性腫瘍 : いわゆる皮膚癌に対しては、当科で切除・再建の両方を行っています。
顔面、特に眼瞼周囲が多いですが、四肢体幹の腫瘍にも対応しています。
可能な限り迅速な対応をするよう心がけ、必要な症例では初診時に外来で迅速病理検査を行うこともあります。 悪性腫瘍は過剰な侵襲は勿論避けるべきですが、その一方で閉鎖に自信がないために不十分な切除になったり、早期に閉鎖できずに負担をかけることも避けたいものです。
再建方法の選択肢を多く持つことと、術中においても必要に応じて迅速病理検査を用いて必要十分な切除を心がけることで可能な限り最小の侵襲で効果を出すことを目指します。
- 眼瞼悪性腫瘍 : 眼瞼は機能的にも整容的にも重要で、再建にはデリケートな配慮が必要となります。
平成23年の眼瞼悪性腫瘍の手術件数は2件でした。
皮弁形成や軟骨移植を組み合わせて、社会復帰に問題を生じない良好な結果が得られています。
目の開け閉め出来ることは当然のこと、逆まつげや外反を生じないことや左右の対称性を損なわないように心がけています。 耳下腺部や頸部のリンパ節転移を生じるような症例では耳鼻科に協力をお願いしています。
腫瘍切除目的の方や、できものがあって心配な方のみならず、術後変形が気になっておられる方も一度ご相談下さい。
生まれながらに耳の部分欠損を生じる疾患で、時に下顎の発育不全や顔面神経麻痺を伴います。
見た目の問題だけでなく、耳介が無くメガネやマスクがかけられないといった不都合を生じます。 治療は保険適応です。
当科で力をいれている症例で、発生頻度は1万人に1人程度と少ないのですが、当科における平成23年の小耳症関係手術は8件でした。
手術は初回に肋軟骨移植による耳介形成を行っています。手術時期は9歳頃、身長130pが目安です。その3カ月後に植皮による耳介挙上を行います。手術は通常、夏休みと冬休みや春休みを利用して行い、学業への影響を減らすようにしています。
十分な大きさの肋軟骨が得られないと良い耳介を作る事は出来ません。患者様の中には出来るだけ早く手術して欲しいと希望される方もおられますが、肋軟骨移植は一生の耳の形を決める大事な手術です。焦らずに最も良い時期まで待って、最良の結果を得られるようにすることをお勧めしています。

その名前の通り、耳の上半分が頭の皮膚に埋まるような形になっているものを埋没耳、耳が折れ曲がってしまっているものを折れ耳といいます。
どちらも外見上の問題の他に眼鏡やマスクがかからないため日常生活で不自由な思いをされる方が多いです。
このような生まれついての耳介変形は生後2カ月頃までに治療を開始すれば、装具やテープによる保存的治療で治り、多くの場合手術は必要有りません。
耳のかたちがおかしいと思われたらすぐに受診してください。
生後6ヶ月を過ぎると耳介軟骨が硬くなりますので、矯正は困難になります。その場合は手術をして治療しますが、多くの場合就学期前(5〜6才)で行います。

眼窩底骨折、頬骨上顎骨骨折、下顎骨骨折、顔面多発骨骨折、涙道損傷、顔面神経損傷などすべて対応しています。
平成23年の顔面骨骨折の手術件数は51件でした。
可能な限りの整容・機能面の修復と同時に、手術による瘢痕を最小限にするよう心がけます。

合指症、多指症、裂手、巨指症といった手指や足趾の奇形の手術を年間十数例おこなっています。
機能的なことはもちろんのこと、美容的にも形成外科特有の植皮をおこなうなど、良好な結果を出しています。症例によって手術時期はさまざまですが、早いものでは生後6ヶ月頃におこないます。

2歳頃までは自然治癒の可能性があるため、手術はそれ以降まで待ってから行います。
ヘルニア門がある場合はそれを閉鎖し、そして臍のくぼみを作ります。特別出っ張りの大きい症例を除いて、通常キズは臍の中に隠れます。
通常、入学するまでには治しておきたいというご希望が多いので、就学期前に行っています。
扁平母斑(いわゆる茶あざ)、太田母斑(青あざ)、異所性蒙古斑など、アザの多くは最近健康保険の適用になっています。Qスイッチルビーレーザーを用いています。
赤あざ(単純性血管腫、いちご状血管腫)に対してはダイレーザーで治療を行っています。
乳幼児期の患者様には全身麻酔でのレーザー治療にも対応しております。
後天性のシミ(いわゆる老人性色素斑など)に対しては保険適用されませんので、自費診療となります。
通常6oスポットが1発1000円です。

熱傷、外傷、手術などの後に残った傷跡をきれいにする治療をおこなっています。
縫い寄せられる傷跡は出来るだけ細く縫い合わせることが基本です。
それが難しい場合や、やけどの後で拘縮(ひきつれ)が有る場合などは植皮や皮弁を用います。
当科における植皮術は、ほとんどの症例で含皮下血管網全層植皮(塚田式植皮)を行っています。
これは通常の植皮術と異なり皮膚の下の脂肪組織の一部とそれに含まれる血管網を付けて移植するもので、 通常の植皮と比較して質感・色調に優れ非常に柔らかく、整容上好ましいのみならず拘縮も最小限となります。
真性ケロイドに対しては、単純に手術するだけでは再発しますので、基本的に保存的治療(圧迫、ステロイドなど)がお勧めですが、 手術をする場合は引きつれの解除と併せて放射線療法を勧めることもあります。


生後数日で出現し生後6ヶ月頃まで大きくなり続け、その後小さくしぼんでいきます。ただ大きくなりすぎると出血しやすくなり、しぼんだあとも跡形が残ります。生後1ヶ月頃からのレーザー治療を勧めます。

耳の軟骨の軟らかい生後2ヶ月目頃から治療を開始すれば多くのものは手術しなくてもテープや矯正装具で治ります。生後3ヶ月までの受診を勧めます。
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